「形は異例」でも「一の建築物」と判断
仙台市建築審査会は2月15日、仙台厚生病院の職員寄宿舎建設計画を巡り、周辺住民21人が建築確認の取り消しを求めた審査請求を棄却した。建築確認は日本ERIが下ろしていた。
渡り廊下で接続する2つの建物を「一の建築物」とみなせるかが主な争点だった。市建築審査会は、「社会通念に照らし、一の建築物と認められる」と判断した。
裁決書によれば、この建物は北棟と南棟からなる。北棟は地上8階建てで延べ面積が2227.63㎡。2010年7月8日に竣工し、既に利用されていた。
増設中の南棟は地上5階建てで延べ面積1343.29㎡。2階から4階が独身社員用の宿舎、1階は保育所として計画されている。北棟と南棟の1階は35.2mの渡り廊下で接続。各棟と渡り廊下をエキスパンションジョイントで接続する計画だ。
周辺住民は、次の2つの理由を掲げ、この宿舎の建築確認が違法であると主張した。
1つは南棟の敷地の接道幅員が宮城県の建築基準条例を満たしていない点だ。同条例では、延べ面積1000㎡以上の建物に接道幅員6m以上を求めるものの、この敷地では4.54mしかない。
もう1つは「一敷地一建築物の原則」に反する点だ。渡り廊下でつなぐ2棟は浴場や炊事場、管理室など建物にとって必要不可欠な部分を共有しておらず、用途上不可分とは言えない。社会通念に照らして「一の建築物」とはみなせないと訴えた。
一方、建築主である財団法人厚生会は、渡り廊下で接続しており、用途上不可分だから「一の建築物」だと主張。北側敷地の接道幅員が6m以上だから南棟も建設できると考えた。
市建築審査会は、「エキスパンションジョイント」で接続され、独立に構造計算を行っているが、それだけで構造の一体性の有無は論じられない」と言及。外観の一体性についても、「耐火構造で、外壁や仕上げも同一だが、長さ35.2mの1層の渡り廊下で接続しているだけであり、構造、外観の一体性は脆弱だ」と認めた。
半面、北棟と南棟の職員宿舎や保育所などが、いずれも仙台厚生病院の職員の厚生施設として計画され、同病院が一体として管理・運営する計画であると判断。さらに、南棟の路地状敷地を拡幅しない限り、南棟を単独で譲渡できないことに触れ、「機能上の一体性は認められる」と結論付けた。その上で、「形態としては異例のものだが、社会通念に照らし、『一の建築物』である」と認めた。
このほか、南棟の建築による景観侵害や日影被害といった、周辺住民の権利や利益に対する損害は認められないとして、周辺住民の請求を棄却した。(高市清治)
ソース :
日経アーキテクチュア 2011_3-10