東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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完売マンションの確認取り消し東京地裁で建築主が敗訴
 東京郁文京区で完成間近たった分譲マンションの建築確認取り消しを巡る訴訟の判決が、東京地方裁判所て5月24日に下された。建築確認を取り消ひた都側の判断に「誤りなし」と認め、建築主の請求を棄却した。

 東京都文京区に立つ分譲マンション「ル・サンク小石川後楽園」。完成間際の建築確認取り消しから2年半たった今なお、仮囲いに覆われたままだ――。建築主のNIPPOと神鋼不動産は2016年5月、都を相手取り、「建築確認取り消し」の取り消しを求める訴訟を東京地方裁判所に提起した。東京地裁が下した判決は、都建築審査会が15年11月に建築確認を取り消した判断は適法であったと認定。建築主が敗訴した。
 当該マンションは地下2階・地上8階建て(高さ約27m)の鉄筋コンクリート造で、総戸数107戸。15年4月に全戸が完売していた。設計は目建ハウジングシステム、施工は安藤ハザマが手掛けた。12年7月に建築確認を下ろしたのは都市居住評価センター(UHEC)だ。
 マンション南面は急斜面の「堀坂」に面する。UHECは建築確認でこの地形を勘案し、地下2階から地上2階までの4フロアを、地上と同一平面上にある避難階と判断した。しかし、周辺住民の審査請求を受けた都審査会は、1階の大規模駐車場が災害時に屋外に出られる避難階に該当しないと判断。建築計画が都建築安全条例に違反するとして完成目前で建築確認を取り消した。
 文京区はマンション建設中の14年3月に高さ制限を変更。周辺地域を高さ制限22mの高度地区に指定した。建築主が建築確認を再申請すれば、当該マンションは上層の2階分を減築する必要がある。あるいは既存建物を解体したうえで新たに建て直すか、計画自体を白紙に戻すしかない。建築主も引くに引けない状況となり、都に対する訴訟を決断したという経緯がある。

 裁判の争点は3つあった。1つは、建築確認を取り消した都審査会の判断の誤りの有無。残り2つは、都審査会の建築確認取り消しに関する「手続き上の違法性」と「裁量権の範囲の逸脱・乱用」についてだ。  大規模駐車場の構造や設備を定める都条例32条6号は「避難階以外の階に設ける場合は、避難階または地上に通じる直通階段を設けて避難階段としなければならない」と規定する。駐車場の床レベルと堀坂に面する出入り口の高低差は2.5m。車路は幅員5.8m、長さ約19m、勾配8分の1だ。
 裁判で都は、2.5mの高低差は、建物にすればおよそ1階分に相当すると言及。避難階に該当するには高低差は1m程度までと考えており、「駐車場が車路で地上と連結していても、避難階とはいえない」と主張した。そのうえでマンション駐車場の床面積が1536㎡で、床面積500㎡以上の大規模駐車場に該当するため、都条例32条6号の適用対象になると指摘。避難階段を備えなければならないと主張した。
 一方、建築主側は建築基準法施行令13条1号では避難階を「直接地上に通ずる出入り口のある階」と定めていることから、都条例32条6号に照らして建築確認を取り消した都審査会の処分は、避難階に該当するための要件を不当に付加しているなどと訴えた。
 今回の東京地裁の判決は、都の主張を全面的に認めた。駐車場と道路出入り口がスロープ(傾斜路)によって空間的に連続しているとはいえ、同一階にあることになるものではないと指摘。大規模駐車場は避難階以外の階にあると認められるため、避難階段が必要だとした。そのうえで、スロープは避難階段に当たらず、住宅部分の避難階段も駐車場の避難階段とみなせないなどと判断した。
 このほか裁判で建築主は、建築審査会が審査請求を受理した1カ月以内に裁決しなければならないと定める建基法94条2項に違反すると主張。都審査会が審理に3年以上かけて、完成目前に建築確認取り消しを決めた手続きの違法性を訴えた。
 東京地裁は、周辺住民など審査請求人からの違法事由の主張書面の提出や、UHECが都審査会に提出した弁明書が多数に上ったと指摘。事務処理の内容に照らせば、審査請求から確認取り消し処分までにかかった時間の長さが、明らかに合理性を欠くとはいえないと判断した。
 また建築主は、ほぼ完成していたマンションの建築確認を、都条例32条6号違反の一事をもって取り消すことは、公共の福祉に適合せず、都審査会の処分は裁量権の範囲を逸脱、または乱用していると主張した。
 しかし、東京地裁は、都条例32条6号が災害時の避難という人命保護に関わる内容であるため、建築確認の取り消しが公共の福祉に適合しないものとはいえないとした。
 原告の神鋼不動産広報部は本誌の取材に、「当方の主張が認められず、誠に残念だ」とコメントした。NIPPO法務部は「当社らの主張が認められず、本判決は誠に遺憾。現段階(5月25日時点)では対応は決まっておらず、まずは判決内容を詳細に精査したうえで検討する」としている。
 一方、周辺住民(被告参加人)の訴訟代理人を務める神楽坂キーストーン法律事務所の農端康輔弁護士は、「今回の判決について、周辺住民の代理人としては妥当な内容と考えている。建築主は今後、周辺住民とよく協議したうえで事業を見直してもらいたい」と話す。
 確認取り消しを巡る裁判では、法解釈の誤りが争点となることが多い。確認取り消しは設計者や施工者にとっても多額の損害を負う危険性をはらむ。条件が厳しく法解釈が難しい場合でも、設計者はできるだけ法令上のリスクを排除し、余裕のある設計を心掛けるべきだろう。(江村英哲)


ソース :
日経アーキテクチュア 2018_6-14
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