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耐震補強済み庁舎はなぜ倒れた
 なぜ杭は壊れたのか。2016年4月の熊本地震で被災、杭損傷により建物全体に傾斜が残り、建て替えが進む益城町役場庁舎(熊容県益城町)の解体現場。建築研究所が実施した詳細調査で被害実態が明らかになった。

 躯体の解体がほぼ終わり、更地のようになった益城町役場庁舎。敷地に所々、深い穴が掘られていた。地面から3m程度まで掘り下げ、基礎梁の下の杭を露出させ、杭基礎の被害状況を調査しているのだ。
 穴の1つに降り、ふーチングの側面に近づくと、鋼管杭の杭頭部分が潰れ、管に沿って丸く膨らんでいた。
 杭頭の膨らみは、この位置で鋼管杭が座屈したことを示す。「ちょうちん座屈」と呼ばれる壊れ方だ。地震の際、設計の想定を大きく超える鉛直荷重が掛かったことを物語っている。今回の調査で、こうした杭のダメージが明らかになった。

 調査は建築研究所が2018年5月中旬から実施した。東日本大震災以来、建物の倒壊・崩壊は免れたものの、杭被害で供用中止に追い込まれる事例の報告が相次いでいることから、機能維持の研究に乗り出しているのだ。益城町役場庁舎は熊本地震における典型的な被害例といえる。

 解体された庁舎は3階建て、鉄筋コンクリート(RC)造で、1980年に竣工。2012年に耐震改修を実施していた。16年4月の熊本地震後、被災度区分判定で躯体自体は「中破」と判断されたが、建物は主に北側に向かって傾斜していた。3カ所の掘削調査で杭頭の損傷が判明、町は「困難が多い」として補修を断念した。解体工事に着手したのは18年1月だ。
 調査では杭基礎付近を改めて10カ所以上にわたって掘削、損傷を確認した。冒頭に登場した座屈した鋼管杭は、南面を覆う補強部分の西側(調査番号14)に位置する。
 補強部分と既存部分では杭種が異なる。前者が鋼管杭なのに対し、後者は既製コンクリート杭だ。調査で、既存部分でも杭頭の多くが脆性破壊していたことが判明した。
 損傷状況が一様ではなかったことも明らかになった。取材では、西側(調査番号9)の杭が明らかに傾いているのが見て取れた。中央の柱通りにおける南側(調査番号3)と比較すると違いがよく分かる。
 杭に残った傾斜は、土の中で杭が大きく変形したことを意味する。敷地は北側から南方向へ下る傾斜地に位置しており、また東西で地質にも差があった。建研を含む研究グループは、今回の調査前の時点で杭の挙動に関する予備解析を実施。西側でより杭が地盤変位の影響を受けやすいという傾向をつかんだ。北西側ほど、こうした地盤変位の影響が特に大きかった可能性もある。
 杭被害には建物が揺れた際の慣性力も影響する。研究グループは今後、現場での調査結果を精査し、杭がどう壊れたかを見極める。
 調査を担当する建研の向井智久主任研究員は、今回の調査について、「現場の状況は、これまでの研究成果から外れていないとみている。どのように杭や躯体が挙動したら今回のような損傷が生じるのか、今後の検討で明らかにしたい」と語った。

 今回の調査対象となった庁舎には、地震による被災事例としては珍しいデータがある。庁舎の1階床面に気象庁へつながる地震計があったのだ。熊本地震で2度にわたり震度7の揺れに見舞われたが、庁舎が具体的にどう揺れたのか、基礎上の位置で記録されていたことになる。予備解析もこの波形を用いた。今後、研究グループは破損状況を再現する本解析を進める。
 建研は13年度から杭基礎の耐震性評価に関する研究を進めており、15年度に新築を想定した評価手法をまとめた。熊本地震が発生した16年度からは既存建築物の杭基礎に関する知見の蓄積を進めており、今回の調査結果も含め、18年皮内に成果をまとめる予定だ。 (池谷和浩=ライター)


研究者に聞く
向井智久 建築研究所構造研究グループ主任研究員
杭基礎の耐震設計手法の確立へ

 建築基準法や耐震改修促進法は、大地震時に建物内部の人命を守ることを主眼としている。杭が破損しても、建物が倒壊・崩壊しなければ目的は達成される。だが近年の地震で、法の目的は達成したものの、傾斜によって使えなくなってしまう事例が目立つようになってきた。益城町役場庁舎はその代表例といえる。
 現在、中低層のほとんどの建築物において、杭は長期荷重並びに短期荷重に基づいて選定されており、大地震を想定して耐震性を確認することはほとんどない。一方、国土交通省が18年5月に公表した防災拠点向けのガイドラインでは、地震後の機能確保の観点から、基礎にも耐震性が必要だと明記した。今後、発注者の要求水準の高まりに応え、実際の杭被害を踏まえた耐震設計手法を確立する必要が高まっている。
 我々はこれまでの研究において、建基法における大地震を前提とした想定応力に基づく試設計も実施した。この際は(1)杭体の変形が弾性変形域にとどまる(Sランク)、(2)杭体が多少損傷するが軽微な補修で共用を再開できる(Aランク)、(3)杭体が損傷するが改修で性能が回復できる(Bランク)――という3段階の要求性能を想定した。
 ただし課題が残った。現状の想定では杭の直径を従来より太くせざるを得なかったのだ。液状化しない一般的な地盤でも、既製コンクリート杭ではAランク以上の実現は難しかった。19年度以降、改めて実態に即した設計手法の検討を進められればと考えている。(談)



ソース :
日経アーキテクチュア 2018_6-28
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