東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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大阪北部地震 繰り返されたブロック塀の倒壊死亡事故
 6月18日午前7時58分ごろに最大震度6弱の大阪北部地震が発生した。 地震の揺れは都心部を直撃。6月29日時点で犠牲者は死者4人、負傷者428人に上る。 死者の多くは塀の倒壊や家具の転倒によるもので、その危険性が改めて顕在化した。 現地を取材すると、民家の瓦や店舗のガラスが落下して散乱するなど非構造部材に関する被害が目立った。

 高槻市立寿栄小学校の辺りには警察官が集まり、物々しい雰囲気が漂っていた。6月18日に発生した大阪北部地震で、寿栄小のプールわきに設置していた長さ約40m、総重量12トン以上のブロック塀が道路側に倒壊。小学4年生の女児が塀の下敷きとなって亡くなった。

 同校の塀について、大阪府警が業務上過失致死容疑で捜査。文部科学省も現場を調査した。詳細な調査結果は公表されていないが、現行の建築基準法施行令に照らして、3つの点で問題があった。
 1つ目は高さだ。施行令でブロック塀は高さ2.2m以下に定められている。寿栄小の塀は、高さ約1.9mのプール躯体の上にブロックを8段、高さ約1.6m分積んでおり、道路から見ると約3.5mの高さだった。だが、地盤面をどこに捉えるかは施行令で規定しておらず、特定行政庁の判断に委ねられている。敷地内から見て2.2m以下であれば、適合しているとみなすケースもある。
 2つ目は、控え壁がなかったこと。1.2mより高いブロック塀は、基礎の部分で壁面から高さの5分の1以上突出した控え壁を3.4m以下の間隔で設置。控え壁内部には、径9mm以上の鉄筋を配さなくてはならない。
 3つ目は、ブロック内の縦横に配した鉄筋とは別に、プール躯体とブロック部分を33cmの短い鉄筋で接続していたこと。縦筋は塀の基礎から頂部の横筋にフックで定着する必要がある。  文科省の依頼で現地を調査した大阪大学大学院の真田靖士准教授は、「複数の問題があり、プール躯体とブロック部分の接合が弱かったことも倒壊に影響したのだろう」と語る。

 高槻市の濱田剛史市長は6月19日の会見で、次のように謝罪した。「倒壊した壁が法令に適合していなかったことに市の責任を痛感しており、今後は原因の究明と再発防止に全力を尽くす」。市は、7月中に外部の有識者による「ブロック塀事故調査委員会」を設置する。
 寿栄小の事件は、塀の危険性が度々見過ごされてきたことにも大きな問題がある。プール躯体は、開校した1974年に建設された。当初は上にフェンスを設置していたが、プールの目隠しのためにブロック塀に替えた。設置時期や施工業者などの詳細は明らかでないが、40年以上前からあったことを市は確認している。
 塀については2014年以降で3回チェックする機会があった。同校は、建基法12条に基づく定期報告制度に従い、14年2月と17年1月に定期点検をしていた。地震発生直後、市が点検会社に聞き取り調査をしたところ、両社とも「記憶があいまい」と回答。17年2月に提出された定期点検結果報告書を確認すると、塀の部分は「―」と記されていた。
 加えて15年11月、同校の防災教室で講師を務めた防災アドバイザーが、地震発生時に危険な箇所を複数指摘。そのなかに塀が含まれていた。16年2月、校長が教育委員会の職員と打ち合わせをした際、塀も見てはしいと依頼。職員が目視と打音で検査し、問題はないと口頭で伝えた。職員は建築技術職で入庁し、営繕や点検などの経験を積んだ人物だった。
 塀の危険性が見過ごされたことについて、市の平野徹教育管理部長は、「建築基準法違反という認識がなかった」と説明した。

 大阪北部地震では、数多くの学校や民家の塀で、亀裂や傾きなどが目立った。大阪市内では男性が1人、石塀の倒壊で死亡した。
 文科省は6月19日、全国の幼稚園や学校などにある塀について安全点検を要請。国土交通省も同月21日、既設の塀の安全点検について、学校に限らず一般の建築物も対象に、所有者などに向けた注意喚起を行うよう特定行政庁に要請し、目視で点検できる項目も公表した。
 過去の地震でも、ブロック塀の危険性は幾度となく指摘されてきた。だが、なかなか安全性が確保されない要因の1つに、コストがある。
「ブロック塀診断士」の資格を認定している日本エクステリア建設業協会によれば、ブロック塀の診断料は塀の長さや高さによって異なるが、約3~5万円かかるという。同協会の安光洋一専務理事は、「協会は、施行令より厳しい日本建築学会の基準を参考としている。施行令も今より厳しいものに変わらないと、事故は再び起こるのではないか」と危惧する。
 塀は、人命を脅かす凶器になり得るものだ。学会などが示す基準を参考に、安全性を確認する必要がある。


非構造部材の被害相次ぐ

 最大震度6弱を記録した大阪北部地震。建物被害の特徴は、天井材の落下や窓ガラスの割れなど非構造部材の損傷が相次いだことだ。集客施設や大学施設など不特定多数が利用する施設での被害が目立った。
 大阪城ホール(大阪氏中央区)では、高さ約21mの天井ルーバーの一部が落下した。落ちたルーバーはスチール製で重さは約11kg。6月18日は公演のための設営初日で、地震発生時、最大1万6000人を収容できるアリーナ内は無人でけが人はいなかった。建物内に他の被害はなかった。ホールのある大阪市中央区は震度4だった。
 ルーバーはシーリングライトのグレアを防ぐために、天井ボードの下に設置されている。下地にブラケットで引っ掛けており、ボルトなどでは緊結はしていない。落下したルーバーは、アリーナ上部の半円形部分の中心部にあり、ブラケット2ヵ所で下地に取り付けていた。他のルーバーは3ヵ所以上で取り付けており、落下しなかった。
 ルーバーはキャットウオークが寄り付けない位置にあり、1983年の開業以来、点検したことはなかったという。大阪城ホールでは地震発生当日、高所作業車を用いて緊急点検を実施。その日のうちに、ブラケットのボルトを締め直すなどの作業を終えた。

 今回の地震で落下したのは天井材に限らない。震度5弱を観測した京都府向日市にある向日町競輪場では、86年に完成した3階の特別観覧席にある縦約4m、横約1.5mの大型ガラスが7枚破損。ガラスの破片が、特別観覧席の下にある1階の観戦スタンドに散乱した。大阪府吹田市にある大阪大学吹田キャンパスでもエキスパンションジョイント(EXP.J)の剥落や屋外階段の損傷といった被害を受けた。
 非構造部材の被害が多発した背景について、「地震に対する関心や警戒心が薄れているときに今回の地震が発生した」と、地震被害の調査を行った大阪大学の宮本裕司教授(耐震工学)は指摘する。「本来、向日町競輪場のように広い面で使う大型ガラスは、割れた場合を想定して破片が飛び散らないようにする工夫が必要だが、対策が遅れている」
 大阪府内で震度6弱以上を観測したのは、気象庁に記録が残る1923年以降初めて。神戸市で最大震度7を記録した95年の兵庫県南部地震(阪神大震災)でも、大阪は震度4だった。

 一方で、住宅の被害も大阪府内を中心に多発した。目立ったのは、屋根瓦の落下や外装タイルの剥落、壁のひび割れなどだ。消防庁によると住家被害は6月29日時点で、全半壊50棟、一部損壊は1万9193棟に達した。
 震源付近の茨木市や高槻市には歴史の古い町が存在し、町家なども数多く残る。「新耐震基準が制定される以前の建物も多く、耐震性の劣る古い木造建築物を中心に被害が出た」と宮本教授は話す。寺社の山門や銭湯施設の煙突が倒壊する被害も出た。
 高槻市と茨木市が実施した応急危険度判定の6月30日までの結果報告によると、検査した計3483件のうち、421件が「危険」、1784件が「要注意」との判定を受けた。
 宮本教授によると、免震構造を採用したマンションや病院、消防施設などは、今回の地震で最大震度6弱を観測した地域でも機能を発揮し、被害が少なかった。被災後も住民の生活機能を維持していたという。  被災地ではこのほか、交通インフラや地盤関連の被害もあった。例えば、枚方市駅前のペデストリアンデッキが路面タイルの破損で一時通行止めとなり、大阪市西淀川区佃の新佃公園の一部では、液状化現象が発生した。


活断層帯との関連を調査

 6月18日午前7時58分ごろに発生した大阪北部地震では、大阪府高槻市や茨木市などで最大震度6弱を観測した。気象庁によると、震源の深さは13km、マグニチュード(M)は6.1。震源は、兵庫県から大阪府に延びる有馬-高槻断層帯付近だった。東西方向に圧力軸を持つタイプで、地殻内で発生した地震とみられている。また、地震活動域の北側では逆断層型、南側では横ずれ断層型の地震が発生した。
 震源付近には、有馬-高槻断層帯が存在する。政府の地震調査研究推進本部は「これらの活断層帯に関連した活動である可能性がある。詳細は今後の調査観測結果などを踏まえ、さらに検討を行う必要がある」と評価した。
 防災科学技術研究所(NIED)の観測記録によると、最大震度6弱を記録した高槻市(K-NET高槻)での地震動の最大化速度は806ガル。
 筑波大学システム情報工学研究科の境有紀教授はNIEDなどの観測データを分析。「今回の地震は、周期が0.5秒以下が卓越する極短周期の地震動であった。全壊などの被害を及ぼす1~2秒の周期が小さいため、建物に大きな被害が生じなかった」(境教授)との見解を示した。

(菅原由依子、坂本曜平、森山敦子)


ソース :
日経アーキテクチュア 2018_7-12
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