東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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「界壁なし」でレオパレスを提訴
 界壁のない集合住宅が見つかり、約3万8000棟を調査中のレオパレス21。岐阜市の物件所有者が補修費を約1800万円と試算し、岐阜地方裁判所に損害賠償を求めて提訴した。一連の問題による訴訟は全国初となる。

「本来なら施工が必要な小屋裏の界壁が施工されていない。また、天井懐部分の界壁に石こうボードが張られていない」
 レオパレス21が1990年代に販売した木造アパートの所有者が8月22日、建物に建築基準法に違反する瑕疵があるとして、約2000万円の損害賠償を求める訴訟を岐阜地方裁判所に起こした。一連の界壁未施工問題で、物件の所有者による訴訟は全国初のケースだ。請求の内訳は、補修費用約1800万円、弁護士費用約182万円などだ。
 レオパレス21は18年5月末、確認申請図書に記載された小屋裏界壁が未施工の物件が複数見つかったことを発表。1989年から現在までに販売した集合住宅など3万7853棟を全株調査している。界壁工事の不備が見つかれば全て改修する方針で、界壁1カ所当たりの施工単価は14万~15万円との目算だ。

 当該アパートは岐阜市にある。訴状によると、原告である所有者は95年4月にレオパレス21(当時の社名はエムディアイ)と契約を交わした。エムディアイー級建築士事務所が設計・工事監理者、エムディアイ名古屋店が施工者となり、同年8月にアパートが完成した。工事金額は約9600万円だった。
 界壁の未施工が判明したのは2018年3月。所有者が物件の修繕の際に、一級建築士に建物の調査を依頼したのがきっかけだ。18年3月から3回の調査を実施した纐纈誠建築事務所(愛知県長久手市)の纐纈誠氏によると、確認申請時に添付された設計図書の仕上げ表には、「界壁は防火遮音構造とする」との記述があった。また、断面図には界壁となる部分に斜線を入れて、1階床面から小屋裏まで界壁が達する旨を記していた。
 纐纈氏は、「この建物は小屋裏や各階の天井懐が、建基法などの規定に反している」「基礎上から屋根に達する部分まで、各戸の界壁は耐火構造、準耐火構造または防火構造とするとともに、遮音構造としなければならない」と指摘する。
 特に問題視するのが「2階天井と小屋裏床」「1階天井と2階床」の狭間236㎜の防火性能だ。纐纈氏が102号室の天井を剥がして確認すると、天井懐の界壁は床や天井で分断しており、石こうボードが張られていなかった。201号室の天井懐も同様のつくりとなっていた。纐纈氏はこの物件の補修について、「小屋裏に両面防火構造の界壁を設ける」ことに加え、「各階の天井懐の界壁は、両面に石こうボードを2枚重ね張りするとともに、それぞれを遮音構造とする」と提案した。
 レオパレス21は、纐纈氏が「天井懐の界壁」と示した部分について、界壁が分断していることを認識している。同社広報部は本誌に対し、「岐阜地裁に訴えのあった物件は枠組み壁工法だ。その防火設計指針などを準用して、ファイアストップを適切に設けた。ファイアストップがあれば界壁が連続していなくても問題ないとする法解釈を参考に、安全性に問題はないと考えて施工した」と回答した。
 裁判ではこの天井懐の界壁も争点になるとみられる。同部位の補修を認めれば手間やコストが想定以上にかさむからだ。天井懐の界壁への石こうボード張り付けは、化粧ボードや構造用合板を剥がす必要がある。また、屋内での作業が必要なため、住人の協力も欠かせないだろう。
 実際、三重県桑名市で実施した共同住宅の補修では、天井懐の界壁に手を加えていない。本誌が入手した資料によると、レオパレス21は市に対して、「天井懐には厚さ38㎜の根太を4本設置することで、ファイアストップとして十分に性能を満たす」と説明している。
 桑名市は18年7月25日、レオパレス21による界壁是正が完了したとの報告書を受理。建基法に規定する界壁が小屋真部に設置されたとして、「是正がなされた」と確認した。同市建築開発課は「判断基準については回答できないが、是正を確認した物件については、建物全体として支障はない」と説明する。
 是正工事が適切かの判断は特定行政庁に委ねられる。レオパレス21は、既に複数の特定行政庁からも、同様の説明で天井懐の界壁については理解を得ているという。

 所有者が建築士を雇ってまで調査した背景には、サブリース契約に関するレオパレス21と所有者の対立がある。サブリース契約とは、アパートなどを一括で借り上げて入居者に転貸し、その賃料収入を大家に還元する仕組みだ。レオパレス21は数十年の長期賃料保証をうたって全国の所有者とサブリース契約を結んだ。しかし、08年のリーマンショック後、経営不振などを理由に賃料の引き下げを求めた。
 各地の所有者が集まる「LPオーナー会」の前田和彦代表は、「17年9月に国土交通省にレオパレス21の建設業許可取り消しを求める嘆願書を提出した」と話す。新築よりも既存物件の運営事業に注力してもらうためだ。その一環で、既存物件の調査を開始。18年1月に会員にアンケート調査をしたところ、岐阜などで界壁なし物件が見つかった。
 岐阜地裁での訴訟を機に、全国の物件の所有者が瑕疵を訴える可能性も小さくはない。 (江村英哲)



ソース :
日経アーキテクチュア 2018_9-13
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