東洋構造コンサルタント株式会社 1級建築士事務所
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震災時の崩落で書類送検
 東日本大震災での建物崩落で、初めて刑事責任が問われる。警視庁は、商業施設のスロープ崩落事故で構造設計者ら4人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検。死者も出た事故をめぐる問題は、新たな局面を迎える。

 東日本大震災でスーパーマーケット「コストコ多摩境店」(東京都町田市)の立体駐車場のスロープが崩落し、8人が死傷した事故で警視庁は3月8日、設計や監理を担当した一級建築士4人を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。同震災での建物崩落で刑事責任が問われるのは初めてだ。
 書類送検されたのは、意匠設計と工事監理を担当したケイパートナーズアーキテクツ(東京都港区)の代表と元設計部長、構造設計を担当した高木直喜建築事務所(石川県野々市市)の高木直喜代表と都市構造計画(東京都豊島区)の代表の計4人だ。構造設計を担当した2人の送検容疑は、地震に対して構造上の安全を確保し、設計をすべき注意義務を怠り、適切な構造設計をしなかった疑い。構造設計は一度、都市構造計画が設計した後、高木直喜建築事務所が設計変更に関わった。意匠設計と工事監理を担当したケイパートナーズアーキテクツの2人は、大型商業施設の設計をまとめるべき責任がありながら、構造設計を確認すべき注意義務を怠り、耐震性の低い構造設計をさせた疑いが持たれている。警視庁は、この4者の過失の競合によって、店舗本体と車路スロープの接合部が破断してスロープが崩落する事故を招いたとみている。

 コストコ多摩境店の竣工は2002年9月。同店がある町田市は11年3月11日の震災発生時、震度5弱〜5強の地震に見舞われた。その際、店舗や立体駐車場のある鉄骨造・地上3階建ての建物本体に外付けされていたスロープが、約50mにわたって崩落した。車3台が下敷きになり、2人が死亡。スロープに避難していた6人が、全治1年2カ月〜1年5カ月の重傷を負った。周囲の建物に目立った被害は無く、コストコの被害は突出していた。崩落事故を事前に予想し、避けることはできなかったのか。警視庁は設計・施工に問題があった可能性があるとみて、捜査に着手した。だが、捜査は長期化した。警視庁は、専門家による鑑定も複数行い、最終的に構造設計のミスが原因と結論付けた。関係者の話を総合すると、事故の主因は、スロープと建物本体の接合部の強度不足とみられる。本体部分は純ラーメン構造、スロープはブレース構造と異なる構造だった。接合部は、H形鋼の梁同士をガセットプレートで接合するものだった。事故後、施設を運営するコストコホールセールジャパンは、第三者の設計事務所2社に依頼して事故原因調査を実施。11年9月、調査結果の概要を明らかにしている。「本体部分が、剛性の高いブレース構造のスロープ部分よりも大きく変形し、これにより本体部分とスロープ部分の接合部が破断し、車路スロープ部分が倒壊した」、「本体部分の各階に発生した地震力が、床構面および接続部のガセットプレートを通じてスロープ部分へ集中した」と事故メカニズムを推定。そのうえで、「建物の本体部分と車路スロープの設計図書は建築時における構造関係の法令に基づき作成され、建築確認申請およびその後の変更申請は関係当局に適法になされたうえで確認を得ていた」と適法性を強調していた。確認申請の段階では本体とスロープの床スラブは一体化した構造だったが、実際には連続していなかったことも事故調査で判明した。コストコ社は「構造設計図書で意図されたものではなく、実際の施工との相違に関する指示や質疑応答が関係者間でなされた記録も確認されていない」と言及していた。

 「私の設計では本体とスロープを一体で施工することにしていた。建築確認も取得しており、建築基準法上も問題はない。設計ミスとは考えていない」——。建物の構造計算を担当した高木建築士は、本誌の取材に対し、書類送検の容疑を否定した。高木建築士によると、構造設計はもともと都市構造計画が担当しており、02年1月8日に建築確認を取得していた。この時点では本体にもブレースが入っている設計だった。しかし、確認申請中だった01年12月下旬には、コストコ社の担当者から高木建築士に対し、構造設計の変更依頼があった。高木建築士はコストコ社の要望に沿って、本体のブレースを外すように設計を変更。10日前後で構造計算を仕上げた。高木建築士の構造計算に合わせて、もともとの構造設計者だった都市構造計画が構造図を描いた。02年1月25日に計画変更を申請し、2月7日に確認を再取得。9月に竣工した。高木氏は本誌の取材に対し、「設計を変更したのは、発注者のコストコ社が工期短縮を希望したからだ。本体を純ラーメン構造にしたのは、ブレースの溶接が不要なので、熟練工を集める必要もなく、工期短縮につなげられるからだ」と主張する。また、スロープにだけブレースを入れたのは、都市構造計画の指示に従ったものだとも訴えた。「柔らかい本体に、硬いスロープを外付けすることは、構造設計上あまり考えられないこと。私が意図したものではなかったが、断り切れなかった」コストコ社の代理人の弁護士は本誌の取材に対し、「個別の取材には応じられない」とコメントした。意匠設計者であるケイパートナーズアーキテクツも「現時点では何も話せない」とコメントしている。

 過去の震災でも建物の崩落で多数の死傷者が出ているが、設計・監理に携わった建築士が立件されたことはない。起訴されるかどうかが、今後の焦点となる。建築紛争に詳しい福田晴政弁護士は、今回の書類送検について、次のように話す。「警視庁の発表を見る限り、意匠設計事務所の2人に対する書類送検には疑問を感じる。通常の意匠設計者は、構造設計の耐震性を確認することはできない。それにもかかわらず意匠設計者に、耐震性能が低い設計を構造設計者にさせてしまったことに対する注意義務違反を認めることは、無理があるのではないか」
 書類送検とはいえ、地震によって崩落した建物の構造設計について、構造設計者でだけでなく意匠設計者も刑事責任を問われたことは、建築界に大きな波紋を広げている。 (高市 清治)








ソース :
日経アーキテクチュア 2013_4-10
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